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アイドルのヒ・ミ・ツ  7

ボクは父の住んでいたマンションを売り払って父の家財道具一切をオークションに掛け借金返済に充てることにした。ボク自身も住居代わりにしていたホテルを引き上げ社長室に寝泊まりすることにする。
福服さんは、
「社員たちに示しがつきませんのでどこかに居を構えてくださった方が宜しいのでは・・」と困惑しているのだが、
(そんな悠長なことを言ってられるか)
と緊縮財政を断行することにした。とは言うものの父の残したものを返済に充てたところで焼け石に水だった。

父が死んでこの会社は運から見放されてしまったようだ。
「若社長大変ですっ!」
突然社員が血相を変え社長室に飛び込んでくる。
「ウチの所属タレント聖林リンが急性盲腸で近くの病院に搬送されました!」
「なんだって、それは困ったことになったな。空いた穴をうちの南山コロコに埋めてもらうしか・・・」
福服さんは聖林リンの見舞いなどの手続きを取るため部屋を出ていく。
その時また別の社員が飛び込んでくる。
「若社長!南山コロコがホームシックを罹って実家に帰ってしまいました」
「なにっ!すぐに実家に電話するんだ」
「は、はいっ」
部下はすぐさま電話する。
「もしもし・・・・・」
電話の相手はコロコの母親のようだ。待ちきれずに聞いてみる。
「どうだ?」
「ダメです。うつ病になって部屋に引きこもって出てこないそうです」
「そ・・・そんな・・・」
ボクは絶句してしまう。傾いた会社を立て直さなければならない大事な時期なのに。
携帯電話が振動する。
「もしもし若社長、大変です」
別の部下からであった。
「今度は何事だ?」
「うちの星空スワンが書置きをして駆け落ちしました」
「なに!コンサート会場の契約をしたばかりだぞ!なんとしてでも捕まえるんだ」
「ダメです。どうやら国外逃亡した模様です」
「なんてことだ・・・・」
その後も数々のゴタゴタにボクは振り回されることになる。
そしてボクの会社の所属タレントはほぼ壊滅状態に陥ってしまった。

ボクは薄暗い部屋に監禁されていた。
所々の漆喰が剥がれレンガがむき出しになっている。どこかの地下室なのだろうか天井から滴が垂れる音が断続的に空虚に響いている。部屋の中はひんやりとしている。寒気を覚え自分はと見ると、上半身裸で足にはなにも履いていない身に着けているモノと言えばズボンだけ。手首、足首、腰、首と鉄パイプで固定され身動きができない。ボクの身体は大きな金属の板の上に磔状態となっていた。
気配を感じて首をねじってそちらの方を見る。かすかな蝋燭の光に目を凝らす。
そこに福服さんがアイスキャンディーを舐めながら立っていた。
「若社長、あなたには失望しましたよ」
福服さんがぶっきらぼうに言う。
別方向から声がする。
「そろそろ始めましょうか」
部屋の隅から男が椅子から立ち上がった。黒い服を着ていたので今までその存在に気が付かなかった。
現れ出でたのは金暮サンタクであった。あの金融業の男だ。彼は上下黒い革の繋ぎを着ている。メガネのガラスにロウソクの光が反射して目の表情は読み取れない。
「若社長、お覚悟を」
彼はそう言うと傍に置いてある木の机からなにかを取り上げる。よく見るとそれは『猫じゃらし』であった。金暮は両手に猫じゃらしを持ってボクをくすぐり始めた。脇、腹、首、股間と小刻みに震わせて猫じゃらしを這わせる。
「うひゃ・・・あはっあひゃひゃひゃひゃひゃ・・・・く、くすぐったい!や、やめて・・・あはははは・・・・」
ボクは必死に抵抗しようとするが身動きできずされるがままだ。
「福服さん・・・た・・・助け・・・・はははは・・・て・・ははは」
ボクは必死に助けを求める。しかし彼はボクの方へ近寄ってくると、今しがた食べ終わったアイスキャンディーの棒を差し出す。それには焼き文字で『当たり』と見て取れた。
「若社長、『当たり』ましたよ。羨ましいでしょう?もう一本アイスキャンディーが食べることができるのです」
福服さんは得意げに言う。
「でも若社長あなたにはあげませんよ」
彼は踵を返すと重い鉄の扉を開けると出て行ってしまった。閉める時隙間から一瞬石の上り階段が見えた。やはりここはどこかの地下なのだろう。福服さんの足音が次第に遠のいていく。福服さんはもう一本アイスキャンディーをもらいに行ってしまったのだ。
「どうです・・・ふふふふ・・・一心スバルさんこれが借金を踏み倒した者が受ける報いなのです」
尚も陰湿な金暮のくすぐりは続く。ボクは首を左右に振りながら笑い転げるしかなかった。
「わたしは今でこそ金融業者をしているんですが実はコメディアンになりたかったのですよ。だから人が笑っているのを見るのが大好きなんですよ・・・・」
なんということであろうか。この哀れな男は人を楽しませて笑わせるという本当の意味を分かっていないのだ。
その時階段を下りる音が聞こえてくる。
(ひょっとして福服さんか・・・・?)
しかし足音は一人ではなかった。少なくとも二人の足音が階段を下りてくる。
(福服さんが仲間を連れて助けに来てくれたんだ!)
追い詰められている人間は自分の都合の良いように考えるものだ。その足音は重々しくゆっくりと階段を一段一段踏みしめるように下りてくる。
そして扉は軋みながらゆっくりと開かれた。
「まいどありぃ!ご注文の棺桶をお届けに参りました」
棺桶職人が西洋風の重い黒い棺桶を二人掛かりで担いで持ってきたのだった。男たちは慎重に棺桶を笑い続けているボクの傍の床に置く。棺桶の蓋にはボクの白黒の写真が張り付けられてある。しゃがんで愛おしそうに棺桶を撫でながら棺桶職人の男はボクを見上げるとニタリと笑った。望みは完全に絶たれたのだ。
笑い死にしたボクはこの棺桶に入れられ人知れず葬り去られるのだろう。
金暮は巧みにボクの急所を責めてくる。
「ふふふふふ・・・・どうですくすぐったいでしょう・・・・」
「あひゃひゃひゃひゃ・・・や、やめてく・・・ふははははは・・・腹がよじれるぅ・・・・・し、し、し、死ぬぅ・・・」

「あはははは・・・くすぐったい・・・やめ・・・ハッ!!!!」
ボクは目覚める。気が付けばボクは社長室のソファの上で横になっていた。立て続きのトラブルから来る疲労でうたた寝してしまったようだ。すぐ目の前に犬の顔が飛び込んでくる。父がマンションで飼っていたけれどマンションを引き払ったので取りあえず会社で飼うことになったラブラドール・レトリバーだ。
ロンと言う名のその犬はボクがうなされているのを見て起こそうとくすぐっていたのだった。
「夢か・・・・・」
思えばリアルで恐ろしい夢であった。
ボクは福服さんが架けてくれたであろう毛布から出てソファに座り直す。体中汗びっしょりになっている。シャツとズボンのまま寝てしまっていた。
ロンの頭を撫でる。ロンは嬉しそうにシッポを振った。
「なんとかしなきゃあな・・・・・」
ボクは誰に言うともなく呟いた。
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