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アイドルのヒ・ミ・ツ 9

「若社長、本日の予定ですが」
と福服さんが予定表を出してくる。
「階下のタレント養成所を視察されてはいかがでしょうか?アイドルの逸材を発見できるかもしれません」
(さすが福服さんだ。いい考えだな)
なんといっても今わが社はタレント不足で困っている状態なのだ。

当ビルの2階から数階上まではタレント養成所になっている。養成所の入会金、月謝などは『ロイヤルエンジェルプロダクション』の貴重な収入源だ。今までモデル、歌手、俳優を生み出してきた功績がある。
巨大なフロアを使っているものの最近は手狭になってきているため新たに土地を買いそこにタレント養成学校を建てるという計画もあったのだが多額の借金ができたため棚上げにされてしまっていた。
しかしボクにとっては中止になった方が都合よく感じられた。エレベーターを降りるだけでタレント養成所に行けるという手軽さがあるからだ。
福服さんとエレベーターから降りるとそこはもう養成所だ。深夜に福服さんの案内で下見に以前ここに来たとき生徒はすでに帰宅して殺風景であった。しかし降りた途端熱を帯びた空気と香しいフェロモンを感じた。福服さんに広間に通される。
そこにいたのはワックスのかかった板張りの上に整列している若き女子たちの姿であった。三百人ぐらいはいるだろうか。
この養成所は女子ばかりで男子はいない。言わば「女の園」だ。始め女性ばかりなのは父の女好きが昂じた結果かと思っていたのだが、福服さんの話によるとどうやらそうではなく昔男性も養成所にいたんだそうだ。しかし当時プロダクションのある人気男性アイドルがファンの誹謗中傷にさらされ思いつめた後自殺してしまったのだった。その頃の会社は弱小ゆえにその男性アイドルは働き詰めでゆとりを父は与えることができなかったのだった。
父はその少年を守りきれなかった負い目を一生背負っていくこととなった。
贖罪として父はこの会社にはそれ由来男性を入れることをやめてしまったんだそうだ。
しかし今まで生きてきてこれだけのかわいい女の子がいる場面に出くわすのは初めてだった。ボクは圧倒されてしまう。それも女子たち皆が社長であるボクに熱い眼差しを向けている。
(こりゃあ、ハーレムができるな・・・・)

「若社長さまぁ・・・気持ち良いかしらぁ・・・」
「うん・・・・まあな」
「ここはぁ?感じちゃう?・・・」
「あ・・・そ・・・そこ・・・」
「ここはどうかしら・・・」
「う・・・うっ・・・いい・・・すごくいい・・・はぁぁぁ・・・」
「うふふ・・・えいっ!」
「おぉぉぉぉ・・・・」
「若社長さまぁ、これだけの耳垢が取れましてよ」
ボクは女の子の膝枕で耳の掃除をして貰っている。耳かきがボクの外耳道をくすぐる。ボクはアラビアの王サルタンのコスチュームをまとっている。別の女の子は大きな団扇でボクに微風を送っている。
アラビア風に改装した大広間には生娘たちが横たわって今か今かと出番を待っている。みんなには千夜一夜のお伽噺に出てくるような色とりどりのアラビアの衣装を着せている。
「若社長、お肩をお揉みしますわ」
新しい女の子がいつの間にか後ろに侍っている。
「おお、そうか・・・・・」
料理が次々と運ばれてくる。
「若社長様、はい、あ~~ん」
食事のスプーン係の女の子がボクの口元までビーフストロガノフをフーフーと自分の息で冷まして持ってくる。
「もぐもぐもぐ・・・うっ・・・うう・・・これを作ったものは誰じゃ。呼んでまいれ!」
おずおずと厨房から一人のうら若き女子が進み出る。
「なにかお気に召さないことがありましたでしょうか?」
料理作り専門の子は脅えて今にも泣きそうだ。
「こんなうまい料理は初めてだ!褒美にそちを来月アイドルデビューとする!」
この子はうれし涙をダラダラと流しながら、
「ははーーーーっ、ありがたき幸せ!」
とボクにひれ伏した。
「いや~めでたい!祝いの踊りを始めいっ!」
すると楽団の女子たちがエキゾチックな音楽を奏でそれが合図で十人の踊り子がベリーダンスを始めるのだった。

「若社長、若社長・・・・」
福服さんの呼びかけにボクは現実に引き戻される。不覚にもボクは妄想に没入してしまっていた。
「若社長、これからこの子たちにジャズダンスを踊らせますのでオーディションのつもりでご検討下さい」
と福服さんは囁くように耳打ちする。
「う・・・うむ」
ダンスのインストラクターが手を鳴らして合図をすると音楽が始まり、女子たちは一斉に踊り始める。
ボクは今にもニヤケそうな顔を必死に堪え、無理やり眉間にしわを寄せ深刻な顔を作って腕組みをしてダンスを睨み付けるように凝視した。

「有望な新人はいましたでしょうか?」
社長室に戻って福服さんはボクに質問した。
実はボクは自分好みの女の子を見つけ社長の地位を利用してなんとか言いよれまいかと思案していた。
そんな不謹慎なことを考えていたので、アイドル発掘のことをすっかり忘れてしまっていた。
「う~ん、急場しのぎでアイドルなんてできないよ。困ったな」
ボクはもっともらしい感想を言う。
「参考になるかどうかわかりませんが・・・・」
福服さんはポケットからなにかを取り出した。
「あなたのお父様が開発された『アイドル製作ソフト』です。時間がある時ご覧になってはいかかでしょうか?」
それはなんの変哲もない一枚のCDロムだった。

仕事の合間の息抜きに福服さんがくれたCDロムをパソコンに入れる。このソフトは父が大金を投じて開発したものだそうで、このソフトには今までのありとあらゆるアイドルのデータ全てが投入されておりコンピューターがさらに時代のベクトルを加え今の時代が求めているアイドル像を解析してバーチャルとして出してくるという代物であった。そしてそのバーチャル像を社員に配布してその像に似た女の子を探し出しスカウトするというものであった。
しかしこのソフトの欠点はそうそうこの像と同じ女の子が見つかるというものではないという点だった。
確かにキーを叩いてパソコン画面に現れてきたのは思わずそそられる架空の美女だった。
(親父も無駄金を使ったものだな・・・・まあ道楽として考えるといかにも親父らしいな・・・・・)
ボクは椅子にもたれて、このソフトをバーチャルアイドルゲームにでも転用できないものかと思案する。椅子を回転させ足をブラブラとさせているとノックして福服さんが入ってきた。
「若社長、ただ今後祭ウマトラが帰社しました」
「後祭?」
初めて聞く社員の名であった。
「今まで北の方にスカウトの旅をして留守にしていたんです。なにか手土産があるようですよ」
現れた男は体育会系を絵に描いたような熱血ビジネスマンで颯爽と登場したという感じだ。
「若社長!初めまして後祭ウマトラと申します。わたくし粉骨砕身、社に奉仕する覚悟であります。宜しくお願いします!」
えらく威勢の良い人だ。
「ロイヤルエンジェルプロダクションの‘秘密兵器‘となるべく北のミスグランプリの少女をスカウトしてまいりました」
「ほう」
ボクは思わず身を乗り出す。
「さあ、おいで」
秘書室に待機している娘を手招きして招き入れる。
と遠慮がちに一人の娘が社長室に現れた。
その子の姿は、足は大根足、ポッコリしている体型、目はクリクリと小さく、少し下膨れの顔、紫外線の少ない土地柄なのか白い肌に、頬の桃のようにピンクが映える。髪は黒髪を後ろに団子状にしてまとめていた。
ボクは期待しただけに思わず勢い余ってずっこけてしまった。
その娘は‘かわいい‘と言うより‘おぼこい‘と言ったら方が当てはまるであろうか。
その儚げな女の子は都会のメイド喫茶でメイドしているより田舎の峠の茶屋で団子を売っている看板娘をしているほうがはるかに似合っているといういでたちであった。
「わたくし後祭ははるばる北の僻地へ行ってこの子長閑モラ16歳をスカウトしてまいりました!この娘こそ明日のスターです!」
誇らしげ言う。
悲しむべきかな後祭は田舎に長期滞在していたものだから感覚がマヒして田舎娘が絶世の美女に見えるようになってしまっていたのであった
あとで聞いた話によると過疎の亜佐川県とんとろ村というところからスカウトしてきたらしかった。その長閑モラという娘は確かにミスグランプリなのだが、村おこしで行った美女コンテストで村にいる若い娘3人の中から選ばれたということだった。
「ちょっと待って!冷静になって・・・・」
「いいえ今の時代は求められているのは『癒し』です。この娘こそ時代が求めている少女なのです!だから・・・・・」
後祭は得々と持論を展開し始める。
あらためて福服さんが用意してくれている後祭という男のプロフィールの性格欄を覗き見る。
『おっちょこちょい
お調子者
思い込んだらやみくもに猪突猛進して壁に激突するタイプ』
とある。
(周りの声に惑わされてはいけないぞ)
冷静に自分の心の声を聞く。
やがてボクの脳内で『このプロジェクト却下』のランプが灯る
後祭ウマトラ32歳と自分よりはるかな年上なのであるが、今の自分の立場は社長である。ボクは熱しているこの部下を冷静にさせなければならなかった。サーカスの猛獣使いの気分だ。
その時、長閑モラが口ごもるようにボクに言う。
「オラでダメけ?」
(う・・・なまってる・・・泣)
聞くところによるとモラは村の期待を一身に背負い退路を断って片道燃料で都会に出てきたのであった。
長閑モラは上目使いに胸の前に手を組んでお願いポーズでボクに涙ながらに懇願してくる。
「オラ一生懸命やるだ!掃除でも、洗濯でも、買い物でも、何でも言ってけろ!」
(芸能事務所は丁稚奉公じゃないんだよぉ・・・泣)
はるばる遠くから来てくれたこの少女には罪はない。下手なことを言って思春期のガラスの心を傷つけてはいけない。
頭が痛くなってきた。
「暫く・・・ひ、一人で・・・か・・・考えさせてくれないか・・・・」
ボクはそう言うのがやっとであった。後祭と長閑は礼をすると静かに社長室を出て行った。
後ろに控えていた福服も気を利かせて部屋を去って行った。ボクは一人社長室のデスクで頭を抱え込んで暫く動くことができなかった。
(よりによって村娘をスカウトしてくるとは・・・)


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